小さな小屋にワラを敷き詰めて暮らしたい

小さな小屋にワラを敷き詰めて暮らしたい
京都の開業歯科医のN氏は大きな邸宅に住まいつつ、広い裏山にこじんまりとしたブラッドフォードを息子さんとともに建てました。
今回の対談も、気さくに関西弁で応対してくださいました。

森 )
こんにちは。さて、自宅は大きな家を建てましたね。

N氏 )
まあ見て。(といい家中案内してくれる)
昔から大きい家にあこがれてたんです。
沢山の男兄弟でちいさい家でしんぼうしてたし。
大人になったらお金もうけして、立派な家建てたる!っていうのが、誰しもの夢。
もともと自然の中で暮らしてきたから、家に続きで裏山も買うた。
せやけど、実際に長年住まいしてみると、大きすぎると不便な事に気付いたんですよ。
掃除は大変やし、冷暖房にも維持費がごっついかかる。
いっぱい部屋があるのに、居間の片隅のこたつにばっかりみんな集まってくる。
エエようにゆうたら清貧やけど、ま、貧乏性ちゅうこっちゃ。

森 )
そうですね。
そこでちいさい小屋が欲しくなった。

N氏 )
そうそう。
息子がまだ中学生のとき、親子でいっしょに組立てたんです。
そのとき、息子のほうが大工に向いてると思うたくらい。

森 )
最近は、畑仕事に精を出してるそうで?

N氏 )
普段は、立ちっぱなしの仕事やし、適度な運動もかねて、外で汗流そかなと思うて。
やってるうちに、外のすがすがしさに触れて気分が爽快になってきてね。
その上、自分で作ったもんが食卓で味わえるから、贅沢なこっちゃ!
中年男の更年期で体調は、はなはだよくないけど、気分転換になるし。
不眠のときに寝ずにそのまんま早朝畑に出ることもしばしばあるワ。

森 )
仕事しすぎとちがいますか?
もっと遊ばなあかん。
ところでバイクも好きやそうで。

N氏 )
ええ、乗るのんが好きです。
診療所へも古いバイクで通勤するし、ベンツもあるけど、やっぱしバイクが性におうてるわ。
譲ってもろたCB125JXなんか大事にしてるでえ。
昔なつかしい古臭い感じがええねん。
落ち着くちゅう感覚かな。
住まいもその理屈やな。
こじんまりした小屋に右向いて左向いたら、用が足せるのがええねえ。
ワラ敷いてその上で寝たい。昔してたみたいに。

森 )
ほお、えらいノスタルジックな響きですね。
まあ、だれでも、広い家に住んでても居間の片隅に家族が寄り添ってテレビ見たりするし、広すぎたらそわそわしてしまう。
昔っから「うさぎ小屋」とけなされてたけど、まんざら悪い意味ばっかりではなさそうや。
で、「小屋にワラ敷いて」は老後の楽しみに?

N氏 )
小さい小屋のそばで広い畑耕す。
晴耕雨読いうやつや。
ゴルフもせんし、祇園のお茶屋遊びもせんけど、自分の思うように暮らしたい。
ときどき女房連れてタンデムバイクで旅行もしたいなあ。
もうそろそろ、そんな年やわ。

森 )
ええこっちゃ。
そら早いことほんまに実行せんとあかんわ。

小さな小屋にワラを敷き詰めて暮らしたい

 

後 記
六畳ほどのブラッドフォードは、主に知人たちと遊び集う別荘のような使い方をされているようです。
母屋には立派な照明やステージのあるカラオケバーもあるのですが、もっぱら小屋に集合するそうです。
当時中学生だった息子さんも今ではおとうさんのあとを継ぐほどに成長されています。
大工にはならずにやっぱり歯科医なのですが。

見栄や欲でなく、それぞれのライフスタイルにあった暮らし方を見つけたいですね。